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2010年03月 アーカイブ

2010年03月01日

個人投資家向けIR、はじめの一歩

 

 上場企業のIR担当者の課題として毎年のように上位に挙げられる事項に個人投資家向けのIRがあります。
企業が個人投資家向けに力を入れるには様々な理由がありますが、

・フェアバリューの実現や株価の適正水準の安定
・経営理念・戦略を理解し企業の成長を中長期で支援してくれる優良・安定株主を獲得し理想の株主構成を形成する
・BtoCの企業であれば投資家=顧客になり得る存在である
などが挙げられるかと思います。

では、手っ取り早く個人の株主を増やすなら?

 株主優待の設定や配当を増やすなどがすぐ思いつきます。ただし、保有期間が短いのも個人投資家の特徴のひとつであり、中長期のファンを増やすのは株主優待であれば、OLC(株式会社オリエンタルランド)のような魅力的な優待が必要になるし、増配は業績によってはそれが難しい企業も多いでしょう。

それでは個人投資家に中長期でファンになってもらうには?

 まず、正しい企業像の理解のための情報提供を行うことは大前提といえるでしょう。優れた業績や成長戦略、充実したCSRへの取り組みを行っていたとしても正しく理解されていなければ個人株主はファンとはなり得ないでしょう。
ITインフラの向上により、Webなどを通じて現在は機関投資家と個人投資家に差の無い情報開示を行えるようになってきました。決算説明会や株主総会に至ってもWeb上で資料の掲載、動画や音声で会場の模様が配信され、地域、時間を問わずに情報を収集できるようになってきています。ただし、同じ情報を開示できていればそれで個人投資家向けのIRとして十分だとは言い難いのではないでしょうか。個人投資家は機関投資家と違い、それぞれ理解度のレベルが異なります。内容を噛み砕いた分かりやすい説明が必要となる場合も多くあります。個人投資家向けのIRサイトや個人投資家向け説明会の開催などがこれにあたるが、費用対効果という面ではすぐに結果に直結する訳でも無く分かりづらい面があります。

 簡単に解決できないので毎年課題として挙がるのですが、取り組む姿勢が1番大事だと考えます。半ば義務的に個人投資家向けのIRを行っている会社や業績が良い時だけIRを行うような会社は市場から見透かされてしまうことでしょう。

 カゴメの「ファン株主10万人計画」で、6,000人余りから10万人の株主を実現させた例は有名ですが、個人投資家向けIRに力を入れる場合はIR部門と経営陣のコミュニケーションが不可欠です。個人投資家向けIRを考える場合、まずは経営陣にIRをする意義と動機付けを探すところから初めてみたら良いかもしれません。

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2010年03月08日

IR活動をサポートする「裏方」の視点と「想い」
<動画配信編>

 

 冊子、ウェブサイト、モバイル、sns、Twitterなどを利用して好きな情報を簡単に得られるようになった昨今。便利になった分、人とのコミュニケーション方法が多様化し、投資家が投資判断のために必要とする情報源も幅広くなってきました。

 投資家は、文字やウェブサイトだけでは物足りず、より多い情報を得たいと思っており、この不況の中で「どの企業に投資すべきか」をシビアに吟味しているわけです。この状況は企業に求められるディスクロージャー(情報開示)とIR活動にも直結しており、IR担当者の活動次第で投資判断に直接影響する、と言っても過言ではありません。

 多くのファン(株主)を獲得するためには、企業に関心を持ってもらい、知ってもらい、ファンになってもらうことから始まります。

 企業が投資家に対して自社の事業内容や特徴を理解できるよう、わかりやすく紹介するように工夫を施しているのが伺えます。コーポレートサイトの内容、アニュアルレポート、株主通信に加え、動画を導入する企業も増えてきました。

 IR担当者は上場企業に課されているディスクロージャー(情報開示)義務を始め、取引所に対して提出する適時開示関係の業務もこなさなければならない中で新たなIR戦略として動画配信を導入すれば優秀な「もう一人のIR担当者」として活用できます。

・クリック1つで動画を再生=経営トップの顔を見て視聴が可能。
・スライド(資料)を見ながら企業の経営状況や配当についても確認が可能。
・対面対応の難しい個人投資家層に対し、IR活動の見える化。
・見たいときに見られる利便性。

 経営トップによる動画インタビューにより、文字だけでは伝わらない企業のビジョン・戦略・経営理念が明確に発信されます。企業のカラーをアピールできる大きなメリットであるので、IR担当者も真剣です。特に、企業に動きが生じたときに動画で伝えるとよりリアルに、ストレートに伝えられるので、投資家の反応もわかりやすくなってきます。

 現在では世界が注目する大企業も動画配信を駆使しており、トップが新たに就任したとき、経営戦略、会社説明など、企業の動きを視覚的に訴えて投資家にアピールをしています。

 「もう一人のIR担当者」である動画配信を我々がお手伝いさせていただくことによって、世の中の動きを肌で感じることができるだけに、常にアンテナを張り巡らせて新しいニーズに対応していかなければなりません。

 企業のトップがIR担当者に求めているものとは。それは、戦略的パートナーとしての役割に期待しているのではないでしょうか。

 動画配信サービスを提供している我々にとって、企業と投資家をもちろんのこと、企業と世界の「架け橋」の役割を担っていると考えております。企業の「想い」を投資家へ「わかりやすく」伝えるお手伝いをさせていただけるというのは、とても奥が深く興味深いものです。

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2010年03月15日

個人投資家の共感を呼ぶIR

 

 企業のIR活動は、決算説明会や株主総会の開催、アニュアルレポートや報告書などの作成、Web上のIR情報充実など様々です。

 ターゲットが機関投資家であれ、個人投資家であれ、それらの活動の目的には、正しく企業や事業理解をしてもらうことが挙げられると思いますが、特に個人投資家向けのIRは、個々人の理解度にもバラつきがあり、課題の1つになっています。

 では、個人投資家向けの有効な発信方法とは・・・?

 個人投資家は、ただ利益だけを追求するだけでなく、企業のファンとして株を保有することも少なくありません。財務状況や業績を分かりやすく表現するだけではなく、株主を「ファンとしての株主」として捉え、「より会社をご理解いただくこと」、「製品をご愛用いただくこと」、「企業との一体感」を感じてもらえるような取り組みが有効な方法あげられると思います。
 例えば、事業内容の説明に企業の理念やメッセージを盛り込んでみるなど。これからは、企業理解の促進のほかに、株主に企業への共感や一体感を醸成することも必要になってくるのではないでしょうか。
 個人投資家向けのIRイベントへ参加するというのも、お互いの顔が見える場で話が出来る貴重な場であると思います。新たなファンを獲得できるチャンスでもありますし、個人投資家のダイレクトな意見を聞くことできます。ただ毎回色んなイベントへ参加して・・・というのは、労力も時間もコストもかかってしまいます。

 以前から言われていることではありますが、いつでも好きな時に情報が得られるWebサイトはIR活動にとって重要な役割を担っています。欲しい情報を素早く見られる、知りたい情報がじっくり見られる企業HPは、企業の「顔」です。トップメッセージや現場の声、言葉での説明が難しい事業モデルや製品の紹介の掲載することは、数字だけでは見せることができない、企業の「人となり」を表現することができるのではないでしょうか。

 今後も、私たちは、動画配信やアニュアルレポートをはじめとする様々IRツールを使ったサポートで、企業と投資家のコミュニケーションに貢献できたらと思います。

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2010年03月25日

動画から伝わるプレゼンターの人間味

 

 仕事柄、毎日のように決算説明会をはじめとしたIR関連の動画を視聴しています。プレゼンターは上場企業の社長や執行役員の方々で、メディアに登場する機会の多い一部の方々を除けば、初めて拝見する方がほとんどなのですが、先日、ある企業の説明会の動画を視聴しているときに、そのときのプレゼンターである執行役員の方に、親近感を感じた瞬間がありました。

 それは冒頭での自己紹介のこと。簡単な略歴が記載された画面で、その執行役員がその会社への志望動機について軽く触れられました。そしてすぐ、本題に移りました。 志望動機といっても、生まれ故郷で、当時からとても大きく有名だったその会社に、小さいころから憧れていて、大人になったら入社すると決めていた・・・という、他愛もないもので、ほんの数秒ではあったのですが、その人の人となりが見えた気がして、会ったこともない方なのに、親近感を覚えたのです。

 経営者をはじめとするプレゼンターのタイプはさまざまで、スマートで洗練されたプレゼンテーションをする人もいれば、そうでない人もいますが、プレゼンテーションの上手さだけではなく、視聴者との距離感というものも、プレゼンテーションにおける重要な要素なのではないかと思います。特に、会議やプレゼンテーションの場でよく使うテクニックであるアイスブレイキング(直訳すれば氷を砕く。最初に和やかな話題を話し、相手との緊張を和らげること)は、説明会の場に出席している人だけでなく、ライブやオンデマンドの動画においても、視聴者がプレゼンターに親近感を持つ有効な手段だと思います。決算説明会の場合は、だいたいの流れは決まっているので、自己紹介の部分がそのアイスブレイキングの役割を果たすことが多いのではないかと思います。

 もちろん、機関投資家の方にとっては、経営数値や業績が第一であるのは当然のことですが、人間の判断には大なり小なり“気持ち”が影響するので、デジタルなものだけでは割り切れないところもあると思います。ましてや、現在多くのIR担当者の方が抱える課題である個人投資家については、さらに感情の部分に左右されるウェイトが高いと考えられます。

 欧米では説明会の情報は動画よりトランスクリプション(プレゼンテーション原稿を書き起こしたもの)をWebに掲載されるのが主流になってきている様です。しかし、“勘定から感情へ”流れが変わりつつあるIRの世界において、動画だからこそ伝わる、経営者をはじめとするプレゼンターの人間味の部分に、投資家の”気持ち“が影響される割合は決して小さくないではないのではないでしょうか。

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2010年03月31日

事業報告ビジュアルが伝えるべきもの

 

 事業報告ビジュアル化映像の制作を進めている中で感じる事のひとつに、映像が過去の情報の羅列に終始し、冗長で予定調和になりすぎているという事があります。

 もちろん事業報告は、1年間の企業活動の情報開示ですから、事実の積み重ねです。そういうものだと言われれば反論はできないのですが、最近、果たしてそれだけでいいのか、と疑問を感じるようになりました。

 以前、自らが製作をした映像を実際の株主総会の本番で見たことがありました。
担当者ほどではありませんが、やはり本番は緊張するものです。製作時に何度も繰り返して映像を見ているにもかかわらず、まだ何か情報が抜けていないか?情報がわかりやすく伝わっているのだろうか?といろいろと考え、気がやすまらなかったのを思い出します。

 そして映像上映が無事に終わった後、私はほっと胸を撫で下ろし、株主の方の反応を見ました。すると、皆一様に、どうでもいいと言った顔で、中には寝ている方まで散見されました。

 何かが足りない。
 そんな空気が会場を漂っているように私は直感しました。

 思い起こせば、あの日の映像に足りなかったものは、株主の心を企業側へと引っ張る求心力だったのかもしれません。事業報告がまるでニュース番組のように淡々と事象を伝えるだけのものになってしまい、企業の魅力を株主に伝達する力のない映像に終始してしまっていたのではないか、と思いました。

 事業報告は単なる報告であり、PRの要素は必要ないと思われるかもしれません。しかし近年は、株式の購入が一般に広く浸透し個人投資家が増えた事で、より企業と一般の方々との距離が縮まってきています。そういった中、今後はより企業の“肌感覚”が感じられる、親和性の高い事業報告映像を作る必要性を感じます。

 事業報告映像は、株主総会で1回上映されるだけのものがほとんどです。しかし、年に1回、企業が株主(=個人)と向き合ってビジョンのすり合わせをする場である株主総会で使われるものだからこそ、映像の持つ「強く・広く伝える力」を十二分に発揮させ、株主の方々にビジョンや将来性をアピールし、魅力を伝え、そして共感を作るツールとして利用してほしいと願ってやみません。

 視聴後に株主の方々が「この企業のファンでよかった。業績が伸び悩む中、社員がコツコツ日々がんばっている姿をみて応援したくなった」と感じていただける映像構成・シナリオ立てをすることも、今後の課題のひとつと捉えています。

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