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2008年05月 アーカイブ

2008年05月01日

インベスター・ネットワークス株式会社

 

(お話を伺った方) 
インベスター・ネットワークス株式会社 代表取締役社長 杉本光生様  

外国人投資家対応策って?

Q1.日本企業に影響を与える外国人投資家について教えてください。

 2000年以降、日本の株式市場は外国人投資家が牽引してきたと言っても過言ではありません。1990年代前半、10%に満たなかった外国人持ち株比率が2008年に28%を超え、東証の売買代金シェアの半分以上を占めるまでになりました。

Q2.ここへきて、外国人投資家離れが進んでいると言われています。

 スティール・パートナーズによるブルドックソース事件やサッポロHDの買収提案等の結果から、外国人投資家の日本市場に対する評価は下がっています。最近ですと、Jパワー株の買い増し問題がありました。これは、今後、日本企業がどのように外国人投資家と良好な関係を築いていくかという点で重要な課題であると思います。本来であれば、上場している以上、自由競争の原則に基づき、企業への投資が制限されるべきではないと思います。ただ、電力・ガス等の公共インフラを提供している企業の場合は、株主と同等に地域住民も重要なステークホルダーですから、株主価値の向上と同時に、企業市民としての役割を議論していく必要があると思います。

Q3.外国人投資家を味方につけるには?

 スティール・パートナーズやTCIといった戦略投資ファンドが注目される一方、企業の株を中長期的に保有し、成長促進を目的とした純投資を行うミューチュアルファンドやペンションファンドは、企業価値を高めていく上で重要なパートナーと考えるべきです。
 一部に外国人投資家=敵対的ファンドと捕らえられている場合がありますが、企業価値の高い企業は、多くの場合、純投資の外国人株主の裾野が広く数百の海外機関投資家が株主に名を連ねています。冒頭にお話したように、東証の売買代金に占めるインパクトを考えると、多くの海外機関投資家に投資される企業が、結果的に企業価値を高めることになり、敵対的買収リスクを回避することにも繋がります。

Q4.日本企業が外国人投資家に評価されるためには?

 ①成長力を打ち出す

 中期経営計画のような将来のビジョンや経営目標達成プロセスを具体的に投資家に示し、成長力をしっかり打ち出すことが重要です。世界の資金の流れを見ると、BRICsに代表される新興の成長市場に投資資金がシフトする傾向にあります。一方で、国内企業のバリュエーションは、歴史的な割安水準にありますので、一部のバリュー系海外投資家が、ファンダメンタルズが良好であるにも関わらず株価が割安な銘柄に投資する状況にあります。本来であれば、企業の成長性に期待するグロース系の機関投資家に対して、中長期的な成長シナリオを論理的に示して、投資を促す戦略的なIR活動が求められます。
 DCF法を使って投資判断をする機関投資家が多いことからも、中期経営計画の目標達成プロセスをより具体的に解説することが有効だと考えます。
*DCF法・・・収益資産の価値を評価する方法の一つ。投資プロジェクトの価値を算出する場合に用いられる。

 ②投資家のマーケティングをする
 
 ある企業のIR担当部長は、「機関投資家は、自社の株を買ってもらう“お客さん”だと思ってIR活動をしている」と話していました。一部には、既存株主と対話することだけがIR活動であると思われている企業があるようですが、潜在投資家を開拓し、株主の裾野を広げていく上で、今後はますます“投資家マーティング”が重要になってくると思います。

Q5.企業IRに求められているものは?

 私が考えるIR優良企業は、経営者が「IRとは何か」を理解し、IR担当セクションと明確な目標を共有しながらアクションをおこせる企業だと思います。逆に、評価できないのは、IR活動はIR部署の仕事で、市場の評価が低いのはIR担当者に責任があると思われている場合です。これは、IR部署にも問題があって、経営トップへの理解促進が足りないとも言えます。また、企業価値を高めることがIR活動の大命題であると仮定すると、株主構成のバランスも重要だと思います。国内機関投資家、外国人投資家、個人投資家がバランス良く株主になっていると、例えばネガティブなニュースが流れた時、個人投資家が狼狽売りしても、機関投資家が慎重な投資判断をすることで、株価の乱高下リスクを回避することができます。

IRナビと株なびを連動させ、効率的なIR活動をサポート

Q6.「IRナビ」について教えてください。

【IRナビ(法人向け)】 予算をかけずに潜在投資家を開拓するツール
 IRナビは、上場企業の株式保有状況の閲覧機能や国内機関投資家約4000名、海外機関投資家約30,000名の投資家データベース(Eメールアドレス含む)を搭載したASPシステムです。導入企業は、ターゲットに対し、「決算説明会の案内」や「新製品のリリース」、「アニュアルレポートの送付」が可能で、予算をかけずに潜在投資家を開拓することができます。株主保有状況を把握、国内外の機関投資家にIRニュースを配信、更にはIRイベントをカレンダー上で運営・管理が可能で、日常的なIR活動全般をサポートできるシステムになっており、現在、200社を超える上場企業が導入しています。

Q7.「株なび」について教えてください。

月間PV:150,000 
会員数:600人 (2007/4/21現在)

 「株なび」は個人投資家向けの投資情報サイトです。特徴としては、各種の銘柄スクリーニング機能や株主優待情報などが閲覧できます。例えば、外人投資家の売買状況や、PERのセクター平均との乖離率などから割安銘柄をスクリーニングし、その中で株主優待が充実している銘柄だけを選別することができます。また、SNS機能を搭載しているので銘柄選びに関する会員同士の情報交換や、日々の株価との連動による運用パフォーマンスを検証できるマイポートフォリオ機能などがあります。将来的には、企業と個人投資家が「IRナビ」と「株なび」を通して相互に情報交換ができるコミュニティサイトを目指しています。

IRナビ、株なびに関するお問い合わせはこちら
support@kabu-navi.jp


取材・文/萩原恵子

2008年05月02日

モーニングスター(株) 株式新聞事業本部

 

(お話を伺った方) 
モーニングスター株式会社 株式新聞事業本部IR部 
ゼネラル・マネージャー 昼間永充様

メディアはIR情報のココを見る!

Q1.個人投資家向けIRに積極的な企業が増加しています。

 バブル崩壊後、法人による株式の持合が崩壊し、2003年以降、日本の株式市場に外国人投資家が流入し始めました。しかし、特に2007年において、
 ・ブルドック事件やJパワー株買い増しの一件で、外国人の日本株離れが進んだ
 ・サブプライムショックや政治不信の影響で、株価が割安になってきている
ことから、あらゆる投資家向けIRの中でも個人投資家IRに注力したい企業は増えてきています。企業価値が解散価値を下回る企業が増える中で、企業価値を高めるためのIRの重要性はますます高まってきています。

Q2.IR担当者に求められる資質は?

 時価総額の拡大を図りたい、企業価値を向上させたい、個人投資家を増やしたいなどの企業のニーズを汲み取り、効果をもたらすため、コンサルティングやソリューション能力が求められます。IRの現場の方はそれを理解されていますが、トップの理解を得たり、社員に浸透させることに苦労する場合があるようです。

Q3.個人投資家に評価されるIRとは?

 企業のトップ自らが投資家に向けて直接訴えている企業です。経営ビジョンや現状などを自分の言葉で伝える姿勢は、投資家には響きます。弊社が主催している個人投資家説明会でも、プレゼンが社長ではない場合「どうしてこの場に社長がいないのか」「社長はプレゼンをしないのか」という声もあり、一方で「社長が話をしている姿を見て投資を考えた」と好意的に捉えている声もあります。ライブドアショック後、個人投資家は学習をしており、決算レポートだけではなく投資の参考として社長の顔・人柄を見る人が増えています。それに伴い、社長のプレゼン能力も求められます。

Q4.メディアから信頼されるIRとは?

 株式新聞の編集方針として、「投資をしている人に役立つ情報を提供する」ことを目的としているので、企業の積極的なIRは参考になります。上場会社が、重要な経営情報を適時開示するのは当然のことですが、そのための体制を整備することも重要です。IR部署は、少数精鋭のところが多いと思いますが、IR担当者を常設させることも重要です。例えば、TDnetサービスで情報を得てIR部署に問い合わせをしたら誰もおらず、確認が取れなかったということもありました。多くのメディアは直接取材をし、肉声で確認して記事にしていますので、必要なときに確認が取れないことは評価の低下を招きます。

Q5.印象に残っている優良IR企業はありますか?

 名前は出せませんが(笑)、問い合わせに対してIR室長自らが移動中の新幹線から回答をくれた企業がありました。その対応の早さと真摯な姿勢が、印象に残っています。一方、取材申し込み後、なかなか対応してもらえず、回答までに数ヶ月もかかった企業もありました。適時適切に情報を開示することプラス、その後の対応も重要だと思います。

株式新聞が提供するIRサービス

 

50~60歳の世代に絶大な信頼を誇る株式新聞は、株式新聞webとの親和性を高め、さらに幅広い層の読者から支持を受けることになった。速報性のweb、予測性の紙面、親和性を深める説明会の開催を通じ、企業のIRをサポートしている。

Q6.株式新聞webを使ったサービス「IR情報」とは?

 代表的なものは「株価ジャッジ」です。毎日、弊社独自のアルゴリズムに従って上場企業約4000社に対して株価の判断を行っています。企業に提供しているIRサービス「IR情報」は、株価ジャッジのコンテンツ上に企業のIR窓口を設置、アクティブな情報を取りに来ている投資家に対して、効果的にIR情報を発信することができます。現在、46社の企業にご登録いただいています(08/4/23現在)。
 また、今回のモーニングスターとの経営統合で新たに、国内外のファンドの株主判明調査や、月間2000万のPV数を生かしたウェブ・トップインタビュー、説明会動画などの新プロダクトも生まれてきています。

-株式新聞を使ったIRソリューション

 広告枠を使ったIRメッセージ広告やタイアップ型IR広告など、紙面を通じて直接投資家に伝えることが出来ます。読者の100%が投資家である株式新聞だからこそ、企業IRの影響力があります。

-個人投資家向け説明会を開催

 個人投資家向けのIRを積極的に行いたいという企業と、経営トップの声を直接聞きたいという個人投資家を繋ぐサービスです。東京、大阪、名古屋、福岡、札幌を中心に、年間130回・4万人強の個人投資家を集めて会社説明会を開催しています。

Q7.どんな方がいらっしゃいますか?

 50歳以上の方が多く参加されますね。質疑応答では、アナリスト顔負けの質問をする方もいる程です。会社説明会の集客は、株式新聞記事下、DM、株式新聞友の会の会報誌、株式新聞web、メルマガ等で行っています。

モーニングスター株式会社 
株式新聞事業本部
○株式新聞
発行部数 39000部
証券専門紙トップを誇り、一般投資家からデイトレーダーに向けて幅広く資産運用情報を提供している。

株式新聞web 
アクセス数  約470万PV/月
投資への意欲が高い40代以上の男性がメインユーザーを持ち、株価ジャッジなど豊富なオリジナルコンテンツに定評がある。

モーニングスター株式新聞事業本部 IRサービスに関するお問い合わせはこちら

取材・文/萩原恵子

2008年05月13日

ストックウェザー株式会社

 

(お話を伺った方) 
ストックウェザー株式会社 代表取締役社長 桐山康宏様

個人投資家はIRサイトのどこを見る?

Q1.最近の企業IRサイトをどう見ていますか?

 何といっても自社のwebサイトでの情報の質・量の向上には目を見張るものがあると思います。また、決算発表を前倒しでなるべく早く行うなど、情報開示の姿勢にも大きな変化が起きていると実感しています。

Q2.個人投資家がチェックするIR情報は?

 個人投資家は、インターネットを通じてIR情報を得ることが容易になり、企業のIRの取り組みも銘柄選択の判断材料にするようになりました。
 ストックウェザーのユーザー(個人投資家)に「企業のIRサイトのどこに注目しているか」と尋ねたところ、半数が株価情報・財務情報・業績の推移に注目していると答えました。また、株式の購入を検討する企業のIRサイトに関しては、半数以上がチェックすると回答。3割の投資家が、企業のトップメッセージや事業報告書もチェックすると答え、「全くIRサイトを見ていない」と答えたのは1割未満でした。IRサイトを通じた情報発信が、非常に重要であるといえると思います。

Q3.個人投資家に、企業のIR活動は投資に影響しますか?

 ユーザーへ「企業の情報開示の姿勢は投資に影響するか?」と質問したところ、「大いに影響する」が25%、「影響する」が50%という回答がありました。企業は、情報開示の姿勢も厳しくチェックされていると考えた方がよさそうです。

Q4.B to B企業のIRとは?

 B to Cの企業は、商品を見ればこの企業ということが分かりますが、B to Bの企業は、まず企業を知ってもらうことが課題です。世界レベルの事業を行っているにも関わらず、一般には知られていない企業が数多くあります。機関投資家は、データ分析等を通じてその企業を見つけることが出来ますが、個人投資家にとっては困難な作業です。ところが、B to Bの企業で個人投資家を意識してIR活動を行っているのは、まだまだ少ないのが現状ですが、個人投資家に自分の会社を知ってもらうことの重要性は、今後ますます高まっていくのではないかと考えています。

ストックウェザーの提供する株価表示サービス

 

Q5.ストックウェザーの「自社株価表示サービス」とは?

 上場企業が、自社の株価と株価チャートを自社のwebサイトに掲載できるサービスです。株価表示のデザインとサイズはカスタマイズが可能なので、サイトの雰囲気を壊すことなく設置が出来ます。

Q6.導入するメリットを教えてください。

 (1)導入までの期間が短い(2週間以内)
 (2)webサイトにあわせたデザインでの掲載が可能
 (3)メンテナンスが不要
 (4)日英の表示が可能
オプションで配当・株主優待を含めた「利回り」を表示することもできます。
「自社株価表示サービス」を導入することで、個人投資家が必要な情報にダイレクトにアクセスできるということが一番大きなメリットだと考えています。また、市場が開いている間は常に更新され続ける株価情報は、静的なコンテンツが多い投資家向けのサイトの中では投資家の訪問頻度を上げるきっかけともなりうるものだと思います。

Q7.ポータルサイトの株価情報ページなどにリンクを貼っている企業もあります。

 当社のユーザーへの調査では、半数が企業のIRサイトで「株価に注目する」と答えています。個人投資家に関心の高い株価情報が、リンクの形でしか表示されていないということは、個人投資家にとっては歓迎できるのものではなく、企業にとっても、せっかくIRサイトを訪れた個人投資家を逃すことになりかねません。

Q8.導入する企業が増えていますね。

 現在、40社ほどの企業が導入されていてその数は着実に増えています。導入されている企業は、個人投資家への関心が高い企業が多く、より利便性の高いサービスを提供したいという思いがあるように思います。
 私たちはこの「自社株価サービス」に「シームレス株価サービス」というペットネームをつけていますが、各社のIRサイトの内容やデザイン、構成、表現方法が進化していく中で、自社株価がまさしくシームレス(継ぎ目なし)に表示されることが次第に当たり前になってきたことも背景にあるのではないかと考えています。

○導入企業例(敬称略)
東京エレクトロン株式会社、株式会社T&Dホールディングス、リコーリース株式会社、マブチモーター株式会社など

Q9.IRアンケートとは?

 上場企業様などからの求めに応じて、その企業を個人投資家がどう評価しているのか等を質問することができるサービスです。100~500人/月の個人投資家の意見を集めることが出来ます。最近では、IRサイト作りにアンケートを活かした例があります。ストックウェザーのユーザー(個人投資家)が現状のIRサイトを評価し、その結果を参考にしてIRサイトのリニューアルを実施した、というケースです。サイトを訪れるユーザーのほぼ100%が個人投資家だという特性を生かしたサービスとして好評をいただいています。


ストックウェザー株式会社 
月間10万人のユーザーが訪れる、国内最大級の個人投資家向けサイト。サイト運営以外にも、法人向けのサービスも幅広く展開している。

○自社株価表示サービス、IRアンケートに関するお問い合わせはこちら
kingdom@stockweather.co.jp

取材・文/萩原恵子

2008年05月22日

(1)IR活動の課題

   

(お話を伺った方)
日本IR協議会 首席研究員 IR-COM編集長 篠原哲郎様

企業のIR活動について

Q1.IR活動の目的は?

IRとは、企業が資本市場に対し、投資判断に必要な企業にかかわる情報を自発的に提供する活動のことを言います。IR活動には、社外への視点と社内への視点からそれぞれ目的があげられます。
  (社外に対して)
適切な企業情報を開示することにより、投資家の理解を促し、適正な企業評価に近づけ、企業価値の向上に貢献することが目的と言えます。
  (社内に対して)
IR活動を実施し、社外のアナリストや機関投資家を含めたステークホルダーの意見を聞き、そうした外部の視点や意見を社内にフィードバックすることで、経営に役立て企業価値を向上させるための取組みを行うことも目的です。

-「企業価値を向上する」とは、株価を上げることに繋がりますか?

IR活動の目的は株価をあげることではありません。ただし、企業の等身大の姿を社外へ伝え、適正に評価されることが企業価値向上に繋がると考えます。企業価値が向上することにより、その結果として株価があがることは考えられます。

Q2.IR活動が市場にもたらす影響は?

IR活動を実施することで、企業価値が正しく評価され、その結果として株価が決まり、資源の最適配分が期待できます。

Q3.IR活動は、企業へどんな効果をもたらしますか?

①経営トップ自らが事業戦略・経営目標を示すことで、株主や投資家の信頼を高めることが期待できます。
②ネガティブな情報であっても投資判断に必要であればリスク情報として開示する、また業績の良し悪しに関わらず継続的に情報を開示することにより市場の信頼獲得に繋がります。
③株主・投資家の意見を可能な範囲で経営に反映させることで、経営が独善的になることを防ぐことができます。
④企業が過大・過小に評価されることが少なくなる
 IR活動により、社外とコミュニケーションをとる事を通して、市場での安定した評価を確立することが期待できます。

現在のIRの課題・問題点

Q4.IR活動を行う企業の課題、個人投資家から見たIRの問題点はどんなものがありますか?

(企業の視点)
日本IR協議会が毎年行っているアンケート調査『第15回 IR活動の実態調査(2008.2)』では、企業が考えるIR活動の課題として、
①個人投資家向けIR活動の充実
②財務情報に表れにくい企業価値の説明
③ウェブサイトによる開示の充実
など、実務的な課題が上位にあがりました。

(個人投資家の視点)
『第3回 個人投資家の投資意識とIRニーズに関するアンケート(2007.9)』では、個人投資家が考えるIR活動の改善点として、
①形式的な情報開示が多い
②リスク情報の開示が不十分
③情報開示のタイミングが遅い
という回答があがりました。
現在のIRの課題・問題点として、決算発表日が特定の日に集中するといった問題があげられます。東証からの「期末後45日以内に決算発表を実施」という要請を受け、その要請をある意味では形式的に判断して、期限である45日目に開示を行う企業が多くなっています。

-「期末後45日以内に決算発表実施」という、東証の本来の主旨は?

45日というのはガイドラインで、本来であれば「なるべく早く開示する」ということが要請の主旨です。企業によって事情もあると思いますが、自社の可能な範囲で出来るだけ早く開示することが望ましいと思います。集中日を狙ったかのような発表は慎むべきです。

■IR活動の課題(n=1218)
(画像をクリックすると、拡大表示します)

IR活動の課題のグラフ  

  出典:日本IR協議会「IR活動の実態調査2008」

■個人投資家が考えるIR活動の改善点(n=3469)

個人投資家が考えるIR活動の改善点のグラフ   
出典:日本IR協議会「個人投資家の投資意識とIRニーズに関するアンケート2007」


Q5.企業の情報開示には、情報の受け手である個人投資家・機関投資家の知識レベルの差があります。

情報の受け手にかかわらず公平に情報を提供することはもちろんですが、ターゲットに合わせた情報を発信することが必要です。個人投資家向けのIR情報としてウェブサイトを充実させている企業もでてきました。「どんな会社なの?」という質問以外に、「その企業の成長性や収益力にとっては、コレが肝である」「コレを伸ばすことによって中期経営計画を達成できる」ということまで明確に説明出来ることが望まれます。機関投資家に出している情報を、個人投資家に分かりやすいよう、工夫をして情報発信していくかが重要です。

>>続いて、(2)IR担当者の抱える課題についてをお伺いしました。

日本IR協議会
https://www.jira.or.jp/

日本IR協議会に関するお問い合わせはこちら
mailto:kanri@jira.or.jp

 

取材・文/萩原恵子

 

(2)IR担当者の抱える課題

    

「東京IR大会2007」

IR担当者の抱える課題

Q6.IR担当者はどんな悩みを抱えていますか?
  *IRオフィサー・・・経営トップを支えるIR責任者

・株主、投資家からの意見をどう社内にフィードバックするか
・社内からの情報収集の方法(社内のネットワーク作り)
・人材育成、キャリアパスの確立
などがあります。
 悩みでも挙げましたが、IRオフィサーは、まだ「キャリアパス」が確立していないと言われていますが、(IR活動野実態調査によると)IR部門長から役員に就任した企業は約2割ありました。専門知識を備えて、会社を代表して社外と対話でき、社内でも評価される人材が育ってきているのではないでしょうか。
 また、当会ではIRオフィサーの習熟度をはかるために、「IRスキルのレベル評価システム」導入の準備を進めています。これを取得することで、社内の人事評価の対象などに繋がればと考えています。悩みも多い反面、IRは、投資家や外部の人との接点が多いので、刺激的でやりがいがある仕事だと感じている担当者が多いです。

-IRサークルについて教えてください。

 当会では、IR担当者同士の交流や情報交換を目的として、IRサークルなどの分科会を開催しています。プログラムは、講師による講演と、会員のグループディスカッションが基本です。講演はIRについての事例報告を中心に実務を学ぶ場として、ディスカッションは、自身の疑問点や悩みを議論し情報交換する場との位置づけです。IRサークルは、学習以外にもIR担当者の人脈作りの場としても活用されています。テーマにもよりますが、IR担当者50~70名に参加いただいています。

-「トップの理解が得られない」と嘆く担当者も多いですが、協議会の対策は?

 会員企業のトップに限定したトップセミナーを開催しています。講師を招き、「IRはトップの仕事である」「外国人投資家がなぜガバナンスを求めるのか」など、IRの本質を再認識してもらう場を設けています。
(過去のテーマ)
中国経済の行方、政治の底流を読む、「責任ある投資」を実行するための対話の重要性 など

Q7.今後、IR担当者に求められるものは?

①財務・経理・資本市場・関連法規の知識
②自社の経営の方向を大局的に把握する力
③社内外とのコミュニケーション能力
 企業と投資家の立場を理解して適切に行動すること、投資家や社内とのディスカッションやコミュニケーションに必要な知識と経験を身につけることが求められています。

-具体的に必要な知識、その活用法について教えてください。

①ファイナンス(財務・知識)
財務や経理の知識は、アナリストや投資家の分析手法や理論を学び、彼らの視点を理解するために必要です。
②法令・制度、自社の事業内容
法令や制度の知識は、株主総会にIRの視点を加えたり、制度的に開示する情報をわかりやすくするために必要です。
③コーポレートガバナンス
コーポレートガバナンスの知識は、議決権行使を促進したり、経営の透明性を高めて不祥事などのリスクを小さくすることに活用できます。
 他に、経営企画、語学などがあげられます。

-年々、求められるスキルが高まっていますが、最も必要なものは?

 資本市場と企業の間の認識ギャップを縮小する能力です。株主・投資家やアナリスト・ジャーナリスト、ときには社内の部門長などの立場を理解し、相手が納得できるようなコミュニケーションをとることが必要となります。

-IR担当者は、財務部門などの出身が多いですか?

 IRオフィサーやIRスタッフ(担当者)は、財務・経理部門や企画部門の出身者である必要はありません。財務だけでなく、自社を横断的に理解し、正しい情報を外部に発信できれば出身は関係ないと思います。営業部門からIR部門に赴任して活躍する人も数多く存在します。

Q8.上場企業の約6割がIR支援会社を活用しています。

-現在、企業はどのようにIR支援会社を活用していますか?

 IR活動のすべてを社内で行うには、人的・予算的な問題もあるので、IR支援会社をうまく活用してもらいたいと思います。当会会員企業のIR担当者からあがる意見・活用法としては、
・ストーリー作りなど、根幹に関わるところは自社で作成
・包括契約ではなく、その会社の得意分野で個別契約する
・企業規模に合わせて相手を選ぶ
・企業よりもむしろ担当者との相性が重要
・外部リソースの活用は、社内の限られた資源(人的・経験・時間など)を補完するためにも重要。但し、明確な目的と意識を持って役割分担を決める必要がある。
などです。

-今後、どう活用していきたいとの意見がありますか?

・業務効率を高めるためだけでなく、支援会社の持つ経験やノウハウを取り入れて、IR活動の質的な向上、つまり企業価値の正しい評価、企業価値の向上を実現する
・支援会社の強み、例えばグループ力や専門知識の深さなどを見極めて選択する
・経営者やIRオフィサーのアドバイザーとする。例えば、外国人投資家向けIRの留意点にコメントをもらう、中期経営計画に対する投資家の反応について、第三者的な立場で経営陣に説明してもらう
・これまでのIRにない視点を提供してもらう。例えばメディアの活用や、リスクマネジメントとIRのつながりなど。
 IR支援会社を、単純なサポートのみではなく「外部の視点」で社内に情報をフィードバックしてもらうことも必要であると思います。

 <<(1)IR活動の課題 をお伺いしました。

日本IR協議会の活動内容

IR活動の普及、IRオフィサーの育成を目的に1993年5月に設立。会員数769会員(2008.5現在)活動内容は、IR大会やIRセミナーの開催、IR実態調査、機関誌「IR-COM」の発行、IR優良企業賞の表彰など多岐にわたる。

日本IR協議会
https://www.jira.or.jp/

日本IR協議会に関するお問い合わせはこちら
mailto:kanri@jira.or.jp

 

取材・文/萩原恵子

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