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2010年01月 アーカイブ

2010年01月08日

心に響くプレゼンテーションの技術

 

 私は30代前半の時、ビジネスパーソンを対象とした「プレゼンテーション研修」や「コミュニケーション研修」などの講師を務める機会が多々ありました。
 そういった経緯もあり、個人投資家向け説明会や決算説明会に参加する際も、「聞き手に対してしっかりと伝わっているかな」という意識・目線を持っています。

 ソフトバンクグループ代表の孫正義さんの講演やプレゼンテーションを聞く機会が何度かあるのですが、いつ聞いても大変分かりやすく、そして強く印象に残ります。その理由を、私なりに考察してみました。

 今回紹介するのは昨年10月29日に開催された第2四半期の決算説明会です。
ソフトバンク株式会社 2010年3月期 第2四半期決算説明会


◆理由 その1 「結論から伝える、結論で終える」
 起承転結でプレゼンテーションすることもありますが、起承転結のバランスを誤ると、伝わりにくくなることがあります。皆さんもこれまでの経験で、他者のプレゼンを聞く際に、「起」があまりにも長く、退屈な経験をされた方もいらっしゃるかと思います。孫さんはプレゼンの冒頭で、「まず結論から、過去最高益を更新」と端的に訴求。そしてプレゼンの最後にも同じ言葉で締めくくります。

◆理由 その2 「1スライド1メッセージ」
 分かりにくいプレゼンテーションのスライドは、1枚のスライドに伝えたいことを沢山盛り込んでいます。しかも小さい文字で、文章で記します。一方、孫さんのスライドは大変シンプルです。伝えたいメッセージが、端的にキーワード化されています。今回のスライドでは「太い青文字」で表現しています。各ページ、そのキーワードのみを見るだけで、頭にすぐに入り込んできます。

◆理由 その3 「繰り返す」
 オバマ大統領の演説のキーワードは「change」。これは大変有名です。「For the world has changed, and we must change with it.」のように「change」という表現を何度も繰り返して使います。孫さんの今回のプレゼンでは「フリーキャッシュフロー」について、何度も何度も繰り返しています。一般の方がプレゼンテーションする際は、「一度、言えば相手に伝わるだろう」と考え、大事な内容も1回しか、発言しない傾向があります。プレゼンテーションが上手な方は、何度も何度も繰り返します。

◆理由 その4 「感情を伝える」
 昔、NHKでプロジェクトXという人気番組がありました。この番組にはひとつのセオリーがありました。プロジェクトに関わっていた方が、当時を振返り、そのときの心境や感情を伝えています。孫さんも同様です。単に業績(=事実)だけを伝えるのではありません。かつて、市場からの評価が低かった時の悔しい心情や、生活する全ての場所と人に情報革命を実現したいという志を強く訴求し、聞き手の共感を獲得しています。

 今回のコラムでは、4つの観点をご紹介しました。今後、私たちは「投資家の心に響くIR」を実現すべく、お客さまのサポートをしていきたいと考えています。

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2010年01月15日

情報発信の手段としてのTwitterへの流れ

 

 ホームページの無い企業は、ホームレス企業などと言われた時代がありましたが、情報発信の手段としてHomepegeからBlog、そしてTwitterへの流れは、その「リアルタイム性」や「温度感」など、我々の「感情」にますますダイレクトに訴えかけています。

 アメリカ大統領選挙で、オバマ大統領が当選した要因は、インターネットを最大限活用したことや、Twitterなどソーシャル・メディアが果たした役割が大きかったのは周知の事実です。有権者にダイレクトに感情に訴えるメディアとして、特にTwitterは最も有効な手段だったのではないでしょうか?
 Twitterを訳すと「小鳥の囀(さえず)り」です。囀りと言うように、少し囁いてみたい、呟いてみたいといったような内容を短いテキスト(140文字以内)にして公開するのがTwitterです。最近では、ソフトバンクグループの代表取締役社長、孫正義氏がアカウントを開設しました。また、今年の1月1日には内閣総理大臣、鳩山由紀夫氏もツイートをはじめました。

 最近は、BlogやSNSに続いて、Twitterの利用者も増えているそうです。見たり聞いたりした「経験」を共有したり、それによって得られる「知」を伝えたり、特に、瞬時に「ツイート」できるこのTwitterの持つ伝搬力には注目せざるを得ません。

 コーポレート・コミュニケーション戦略の一環としてTwitterを活用したり、マーケティング活動・広報・PR活動としての利用など可能性は広がる一方、Twitterの企業アカウントの運用は、非常に難しいとも言われています。例えば、「ツイートの頻度は?」「問い合わせにはどう回答するのか?」などクリアしなければならない問題も多々有りますが、デジタルな表現(勿論ファクトは重要ですが)より、アナログな「感情」をどう盛り込むかが重要ではないでしょうか?「囁くこと」「呟くこと」には必ず「感情」が入るものですから・・・

 今後、企業のご担当者のITリテラシー・情報管理リテラシーが向上し、適切にTwitter戦略が実行されることを期待したいと思います。

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2010年01月22日

アニュアルとCSRの統合レポート化に向けて

 

 最近、クライアントから、アニュアルレポート(以下、AR)とCSRレポートの統合(合本)に関する相談が急増しています。
経済環境の長期低迷を背景にした企業のコスト削減圧力が発端であることも多いですが、ステークホルダーのニーズが多様化し、従来の概念におけるツール毎の機能分担では対応しきれなくなってきたというケースも出てきています。

 単純にコスト削減だけのために両レポートを統合するという考え方には賛同しかねますが、話の発端がコスト削減であったとしても、結果としては、IRコミュニケーションとCSRコミュニケーションのあり方にまで議論・検討が及び、そもそも論として「コーポレート・コミュニケーションってどうあるべき?」という本質的な整理に繋がるという点では、良い動きだと感じています。

 ARアウォードや各種ガイドラインへの対応が目的化しつつあった近年のレポート制作が、レポート統合を契機に、より本質的な目的に立ち返らざるを得ない中、統合されたレポートの役割を単なる「報告書」から「コーポレート・ブランディング・ツール」として捉え、レポートに掲載するコンテンツの取捨選択やWebとの連携を模索して行く必要があると考えます。
 これらの前提を踏まえ、弊社ではレポートを制作する上で大切な観点を以下の3点に置いています。

(1)ターゲットの明確化
(2)一貫したメッセージ性
(3)情報の構造化

 ステークホルダーのニーズが多様化しているが故に、ターゲティングをはじめとするコミュニケーション戦略を明確にしないと、AR+CSRの単に分厚く分かり難い「報告書」になってしまいます。また、読者毎に読みたいコンテンツが違うことから、レポート内の検索性確保も重要になります。

 では、経営やマネジメントの視点からは何が求められるのでしょうか。
 それは、レポート制作の「明確な目的・目標(ゴール)」を提示することであると考えます。
 実際にレポート制作の最前線に身を置く人間として肌身で感じるのは、現場の担当者ほど過去慣性からの脱却に抵抗感を覚えやすいということです。経営・マネジメント層は、単に「コストを削減したい」だけでなく、「そのレポートで何を実現したいか」について明快に発信し、その目的に向かって最良の手法を模索するようメンバーに促す必要があります。

 2010年は、ARとCSRレポートの統合レポート化元年となる様相です。
 これを契機に、「何をしなければならないか」ではなく「何をしたいか・どうなりたいか」という発想で、本質的なコーポレート・コミュニケーションが活発化することを期待します。

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2010年01月29日

アニュアルレポートのデザイン表現

 

 アニュアルレポートに質の高いデザイン表現は必要か?
 IR担当者の方々それぞれにそれぞれの考えはあるでしょうが、私は「必要」だと思っています。

 そもそも、アニュアルレポートの果たすべき主な目的をディスクロージャーとするならば、会社情報全般と経営方針と財務諸表などといった情報を、淡々ときれいにレイアウトして本にすればいいだけの話です。
しかし各社数年に一度、多いところでは毎年コンぺを行い、パートナー先を入れ替えて内容や見せ方を熟考し、大きな労力と膨大な時間をかけているのは何故なのか?

 今回はアニュアルレポート作成において、デザイン表現の役割の一部を紹介します。

 ここ数年、アニュアルレポートの制作にクリエイターとして関わるなかで感じるのは、デザイン表現が多彩に、かつコーポレートブランディングツールとして充分に機能を果たせるレベルのクオリティになってきたということです。
 ほんの4〜5年前までは、一般的なエディトリアルデザインの中でもどちらかというと面白みにかける控えめなものが多い傾向にありました。ところが2007年度あたりから各社共に、経済合理軸視点で手に取るアナリストや機関投資家向けであるからこそ、内容訴求力を高め、独自色に溢れた企画+レイアウトデザインのレポートが目立つようになってきたように思います。
 要するに、「読みやすく」は勿論、本文の内容をよりわかりやすく伝えるためのチャートや表組ひとつをとっても工夫が必要であり、デザイナーは精緻に全体を組み立てていかなくてはなりません。さらにアニュアルレポートを読んだだけでその会社のカラーや想いをしっかり伝えるための表現力が必要になってきたというわけです。

 では、具体的にどういった表現でコーポレートブランドツールというレベルにまで押し上げるのか?
全体の企画・ページ構成がしっかりと組み立てられていなければならないというのは大前提ですが、デザインでそれらのよさをよりひきたたせることができます。そうしてその「企業らしさ」を視覚的に読者に訴えることも可能です。
 たとえば、企業イメージという観点で、コーポレートカラーの使用などはわかりやすい例で、色とあわせたデザイン処理の工夫で、「堅実さ」「暖かみ」「精密感」「インテリジェンス感」「若さ」「安心感」などの抽象的なイメージをつくり出すことで、各企業にあわせた「らしさの表現」が可能となります。
 また、単純に内容をより良くといった観点では、読者に読んでもらいより深く理解、納得してもらうために効果的なチャート、説得力のあるページレイアウトの工夫によって、文章だけでなく視覚的に訴えるより訴求力の高いページづくりが可能となります。

 このように何気ないレイアウトの中にもアニュアルレポートをつくるうえで企画を活かす工夫がデザインには沢山ふくまれており、アニュアルレポートにおけるデザイン表現は、「単なるアニュアルレポートから、コーポレートブランドツールへ」といった一段上のアニュアルレポートを目指すためにかかせない要素のひとつとなり得るのです。

 まだまだ各社改善の余地があるなか、私たちは今後とも企業と投資家、企業と世の中をつなげるツールとしてよりよいアニュアルレポートづくりに、デザイン表現力でも貢献していければと思います。

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