Posted by admin on 2010/01/29
アニュアルレポートに質の高いデザイン表現は必要か?
IR担当者の方々それぞれにそれぞれの考えはあるでしょうが、私は「必要」だと思っています。
そもそも、アニュアルレポートの果たすべき主な目的をディスクロージャーとするならば、会社情報全般と経営方針と財務諸表などといった情報を、淡々ときれいにレイアウトして本にすればいいだけの話です。
しかし各社数年に一度、多いところでは毎年コンぺを行い、パートナー先を入れ替えて内容や見せ方を熟考し、大きな労力と膨大な時間をかけているのは何故なのか?
今回はアニュアルレポート作成において、デザイン表現の役割の一部を紹介します。
ここ数年、アニュアルレポートの制作にクリエイターとして関わるなかで感じるのは、デザイン表現が多彩に、かつコーポレートブランディングツールとして充分に機能を果たせるレベルのクオリティになってきたということです。
ほんの4〜5年前までは、一般的なエディトリアルデザインの中でもどちらかというと面白みにかける控えめなものが多い傾向にありました。ところが2007年度あたりから各社共に、経済合理軸視点で手に取るアナリストや機関投資家向けであるからこそ、内容訴求力を高め、独自色に溢れた企画+レイアウトデザインのレポートが目立つようになってきたように思います。
要するに、「読みやすく」は勿論、本文の内容をよりわかりやすく伝えるためのチャートや表組ひとつをとっても工夫が必要であり、デザイナーは精緻に全体を組み立てていかなくてはなりません。さらにアニュアルレポートを読んだだけでその会社のカラーや想いをしっかり伝えるための表現力が必要になってきたというわけです。
では、具体的にどういった表現でコーポレートブランドツールというレベルにまで押し上げるのか?
全体の企画・ページ構成がしっかりと組み立てられていなければならないというのは大前提ですが、デザインでそれらのよさをよりひきたたせることができます。そうしてその「企業らしさ」を視覚的に読者に訴えることも可能です。
たとえば、企業イメージという観点で、コーポレートカラーの使用などはわかりやすい例で、色とあわせたデザイン処理の工夫で、「堅実さ」「暖かみ」「精密感」「インテリジェンス感」「若さ」「安心感」などの抽象的なイメージをつくり出すことで、各企業にあわせた「らしさの表現」が可能となります。
また、単純に内容をより良くといった観点では、読者に読んでもらいより深く理解、納得してもらうために効果的なチャート、説得力のあるページレイアウトの工夫によって、文章だけでなく視覚的に訴えるより訴求力の高いページづくりが可能となります。
このように何気ないレイアウトの中にもアニュアルレポートをつくるうえで企画を活かす工夫がデザインには沢山ふくまれており、アニュアルレポートにおけるデザイン表現は、「単なるアニュアルレポートから、コーポレートブランドツールへ」といった一段上のアニュアルレポートを目指すためにかかせない要素のひとつとなり得るのです。
まだまだ各社改善の余地があるなか、私たちは今後とも企業と投資家、企業と世の中をつなげるツールとしてよりよいアニュアルレポートづくりに、デザイン表現力でも貢献していければと思います。

