Posted by admin on 2010/01/22
最近、クライアントから、アニュアルレポート(以下、AR)とCSRレポートの統合(合本)に関する相談が急増しています。
経済環境の長期低迷を背景にした企業のコスト削減圧力が発端であることも多いですが、ステークホルダーのニーズが多様化し、従来の概念におけるツール毎の機能分担では対応しきれなくなってきたというケースも出てきています。
単純にコスト削減だけのために両レポートを統合するという考え方には賛同しかねますが、話の発端がコスト削減であったとしても、結果としては、IRコミュニケーションとCSRコミュニケーションのあり方にまで議論・検討が及び、そもそも論として「コーポレート・コミュニケーションってどうあるべき?」という本質的な整理に繋がるという点では、良い動きだと感じています。
ARアウォードや各種ガイドラインへの対応が目的化しつつあった近年のレポート制作が、レポート統合を契機に、より本質的な目的に立ち返らざるを得ない中、統合されたレポートの役割を単なる「報告書」から「コーポレート・ブランディング・ツール」として捉え、レポートに掲載するコンテンツの取捨選択やWebとの連携を模索して行く必要があると考えます。
これらの前提を踏まえ、弊社ではレポートを制作する上で大切な観点を以下の3点に置いています。
(1)ターゲットの明確化
(2)一貫したメッセージ性
(3)情報の構造化
ステークホルダーのニーズが多様化しているが故に、ターゲティングをはじめとするコミュニケーション戦略を明確にしないと、AR+CSRの単に分厚く分かり難い「報告書」になってしまいます。また、読者毎に読みたいコンテンツが違うことから、レポート内の検索性確保も重要になります。
では、経営やマネジメントの視点からは何が求められるのでしょうか。
それは、レポート制作の「明確な目的・目標(ゴール)」を提示することであると考えます。
実際にレポート制作の最前線に身を置く人間として肌身で感じるのは、現場の担当者ほど過去慣性からの脱却に抵抗感を覚えやすいということです。経営・マネジメント層は、単に「コストを削減したい」だけでなく、「そのレポートで何を実現したいか」について明快に発信し、その目的に向かって最良の手法を模索するようメンバーに促す必要があります。
2010年は、ARとCSRレポートの統合レポート化元年となる様相です。
これを契機に、「何をしなければならないか」ではなく「何をしたいか・どうなりたいか」という発想で、本質的なコーポレート・コミュニケーションが活発化することを期待します。

