« 2010年04月 | メイン | 2010年06月 »

2010年05月 アーカイブ

2010年05月10日

インターネットが伝えられること

 

 今から50年ほど前、1960年代にアメリカで軍事研究として実験が始められたことがはじまりといわれるインターネットは、日本では1980年代に大学間で研究が始まり、その後民間に広まり、ご存知のとおり急激なスピードで普及し、現在では国民の4人に3人が使っていると言われています。

 「情報利用者ごとに最適化された情報を、最適なタイミングで提供すること」が重要なIR領域においても、当然のように非常に有効なメディアとして注目されました。
 1990年代後半には多くの企業でWebサイトにIRページが用意されるようになり、2000年4月にはSONYが日本ではじめて決算説明会のライブ配信を始めたとされています。
我々も年間600回以上の決算説明会等の収録のお手伝いをさせていただいています。

 インターネットは革新的な技術としてその後も進化を続け、新たなメディアもたくさん登場してきました。最近でいえば、2008年に日本に上陸した“Twitter”は「会話」メディアとして支持を受け、利用者は今年の2月時点で約562万人と1年で23倍に急増し、インターネットの双方向性にさらに拍車をかけ、可能性をさらに広げるものとなりました。IRの分野においてもその活用が注目されています。

 もちろん、この非常に便利な通信手段であるインターネットにも、まだできないことはあります。インターネット以外のメディア、古くは口伝や実演、その後広まった紙や、ラジオやテレビなども同様ですが、人間の五感、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚のうち、現在のところ伝達できるのは、「見る」視覚情報と、「聞く」聴覚情報のみです。現段階では、触れることや味わうこと、においを嗅ぐことはできません。

 このコラムでもたびたびお伝えしていることですが、私たちは人々の価値判断基準が「勘定」から「感情」へ、つまり、「経済合理的軸」だけでなく「非経済合理的な軸」へとシフトしていくと考えています。

 我々人間は五感により「感情」を動かされることは知られていますが、今後もますます進化を遂げ、メディアの中心的存在でありつづけるであろうインターネットが、視覚と聴覚でどこまで人々の「感情」にリーチすることができるのかがキーポイントとなりそうです。


profile


profile

2010年05月18日

個人株主のロイヤルティ向上のために求められるものとは

 

 様々な業種の企業のIR活動の支援をさせていただいている中で、最近特に、個人投資家に向けての相談が増えてきているのを感じます。その相談内容の中でも特に多いのが「株式の継続保有促進」といったテーマですが、有効な施策までなかなか落ちていかないケースが多く見受けられます。

 上記のような個人株主に向けてのコミュニケーションの中で、最も直接的にアプローチしているものの一つに株主通信が挙げられるかと思います。しかしながら効果的に活用できている企業は少なく、マーケティングアプローチの導入に関しては、成功していると言える状況のものは稀であると言わざるを得ません。

 事例を挙げますと、個人株主が1万人存在する、とある企業が毎号実施しているアンケートで株主の声を集め、それを反映させた情報発信をしているとします。この行為自体に問題はないのですが、気をつけなければいけないのが集まった株主の声は、どういった属性の人たちなのかを適切に把握することができていなければ、かえって構成の方向性をミスリードする可能性が高いということです。

 例えば300枚のハガキの戻りがあり、主に50代以上の方がその中の大多数を占めていたとして、求める項目に「読みやすさ」「今後の成長戦略」といったものが挙げている人が50名と最も多い回答数でした。そこで担当者であるあなたは少し年配の方向けに大きい文字で新たな事業展開の特集を組みました。
 しかしこれで本当に株主満足を高め、ロイヤルティを高めることにつながっていると言えるでしょうか?

 統計的な見地で言えば、その抽出された300サンプルが適切に実態を切り取った縮図となっているかどうかがその判断の分かれ目となりますが、実態は一定のバイアス(偏り)がかかった状態での回答・回収であることは否めません。
 とすれば、アンケートは「株主の声を拾おうとしている企業姿勢の伝達手段」としては機能しますが、それが株主像の把握方法としては参考値の域を出ないということになってしまいます。

 必要なのは株主像を把握するために、適切な抽出方法による株主調査を実施するということであり、株主ニーズに応える施策を実施するためにその調査に基づいた継続保有促進のキーとなるターゲットを選定することです。そしてそのターゲット像を基準にツール制作や説明会、そしてメディア露出を優先順位と共に設計することで、人・モノ・金のリソースの適切な分配が科学的に決定できるようになります。

 株主のロイヤルティを高めるためにはまず株主を定量的に知ることが第一歩であり、マーケティングの領域では当たり前のように行われていることがIR領域においてはまだまだ、というケースは実に多くあります。そのプロセスをどう組み込んでいくかに今後に向けての課題がありそうです。


profile


profile

2010年05月25日

費用対効果を高める「3つの輪」

 

 IR支援の営業を担当させていただいていて、多くのお客様からお伺いする声のひとつに“費用対効果”があります。発信した情報により、株主・投資家の方に投資していただくこと、ステークホルダーの方に参加していただくことなどの効果は、皆様がご興味のあるテーマであると思います。
 そこで今回は、「投資しよう」「参加しよう」など行動を創り出す視点のひとつ、モチベーションについてお伝えいたします。
モチベーションと聞いてどのようなイメージをお持ちになりますでしょうか。目に見えない、雰囲気的…など、捉えようのないものとお考えの方も多いのではないでしょうか。
 実は、モチベーションは公式で表すことができ、下記3要素で構成されています。

「モチベーション」=「目標の魅力」×「達成可能性」×「危機感」

 簡単に言うと「やりたい」×「やれる」×「やるべき」の掛け算です。もともとは、医学保健の分野において患者さんの健康行動を促進するために研究が進み、現在では人事など人間の行動に関わりの大きい分野において認知が高まっているようです。「やりたい」「やれそう」「やるべき」の3つの輪の重なりを大きくすることが、意欲的かつ継続的な行動の促進に影響すると言われています。

 株主・投資家の投資行動や、ステークホルダーの参加行動を促進するためには、勿論複数の要素が複雑に関連しているものであり、一概に言えるものではないと思いますが、IRやCSRの領域においてもこの3つの輪の重なりを大きくしていくことは、費用対効果を高める大切な視点のひとつになると考えます。

 たとえば、株主様に長期保有を促進する場合、配当やキャピタルゲイン等投資効果が得られることや、開示されている情報が豊富でわかりやすい等の要素に加えて、企業理念や事業等に共感し応援したい状態=「やりたい」を創り出すことは、長期に保有し続けることを促進するものと考えます。

 「やりたい」を広げるために、私たちリンクインベスターリレーションズでは、業績や会社規模など目に見える情報のみならず、企業のDNA、事業の意義や価値等の目に見えない情報を心理軸に訴えていくことが必要であると考えます。
 IRをはじめとする企業の発信活動は、企業価値に深く結びついています。ステークホルダーひとりひとりの輪の重なりの広がりは、企業活動という大きな輪を広げていくことに繋がっていくのではないでしょうか。

profile

profile

About 2010年05月

2010年05月にブログ「IR Forum」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のアーカイブは2010年04月です。

次のアーカイブは2010年06月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Powered by
Movable Type 3.34