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2010年02月 アーカイブ

2010年02月05日

世界金融危機後のIR

 

 一昨年秋のリーマンショックによる、100年に1度と言われた世界的な金融危機は、東京マーケットも直撃して大幅な株価の下落を引き起こし、投資家に多大な不安や損失を与えることとなりました。
特に金融立国と言われる国々には、より大きな打撃を与え、国の再生に困難をきたしています。
 アジアを中心とした外需による製造企業の業績回復により、マーケットも昨年後半から底打ちからやっと持ち直してはきましたが、一方で、戦後の事業会社としては最大規模であるJALの会社更生法の申請という事態も発生しました。

 世界の経済構造が大きく変化する中、各企業は、時代の変化をチャンスとして捉え、時代に合わせて柔軟に事業戦略を変革していかなければ生き残ることはできません。
そんな中、本来的には内需による国内産業と言われる企業も変革の努力をしています。

 昨年は各企業とも業績悪化から経費削減を強いられ、IR予算も3K(交際費、交通費、広告費)に近いとされ、大幅に削減する企業が多く、各企業のIRに対するモチベーションは低下しました。
具体的には、会社説明会や決算説明会の取りやめ、ネット公開の取りやめやアニュアルレポートを廃止する企業もありました。

 本年度もまだ厳しい経済状況は続くと思われるものの、各企業ともIR予算についてはやみくもな削減ではなく、決められた予算の中で制度開示と合わせてより効率的に自主的なIR活動を考えているように思われます。
各企業とも株主構成における問題点はさまざまで、機関投資家を増やしたい企業、個人投資家にアプローチしたい企業とそれぞれありますが、メディアへの露出を増やしたい希望はどこも共通な様です。

 以前にも増して資本市場を正常化する必要があり、また何よりも投資家保護の大前提として積極的なIRの必要性はいうまでもありません。投資家とより深いコミュニケーションをとり、企業価値を長期的に増大させる方向でのIR活動が必要です。

 また、機関投資家と個人投資家との情報格差をいかにして埋めるかという努力も不可欠です。個人投資家向けの説明会やWEBでの開示、解りやすいコミュニケーション施策をより増やしていく必要があります。

 資本市場の正常化、活性化のため不況下においても投資家とのコミュニケーション活動として自主的、積極的なIRの継続を切望します。

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2010年02月12日

「株主総会(事業報告)ビジュアル化」の流れ

 

 近年業務の中で株主総会に出席して感じることは、インターネットの普及により自宅から気軽に株を売買できるようになり、株主のカラーが変化したことで、株主総会そのものも変化しているということです。従来は比較的年齢層が高かった株主総会の参加者の中にも、若い方が多数見られるようになりました。

 運営面での変化は、映像機器の進歩により巨大スクリーンやプラズマディスプレイにパワーポイントなどを議事の進行に合わせて映される企業が多くなりました。以前は議長(社長)が招集通知を読み上げて事業報告を行っていましたが、その箇所を映像化する「株主総会ビジュアル化(事業報告ビジュアル化)」の傾向も高まってきています。

 「株主総会ビジュアル化」とは、事業報告・貸借対照表・損益計算書・対処すべき課題などの報告事項をわかりやすく視覚化し、DVDなど高クオリティの映像で上映するものです。株主総会白書によると株主総会を開催する企業の約半数以上が、パワーポイントや映像を使用した「株主総会ビジュアル化」を採用しているというデータもあります。
これらを採用するメリットは下記の3点が考えられます。

(1)招集通知(事業報告)の内容をグラフや写真を用いて映像化することにより、視覚的に訴えて株主に聞き漏れなどのないよう説明する。
(2)プロのナレーターが原稿を読むことで、聞きやすく快適に事業報告の内容を「伝える」ことができる。
(3)事前にナレーション収録を行うことで、株主総会当日の議長や運営事務局の負担を軽減させスムーズな議事進行ができる。

 株主層の変化及び拡大により、興味本位で株主総会に出席される方も多くなりました。企業からの出席特典を目当てに出席される株主も少なくはありません。そのようなビギナー層にとって、株主総会で配布される招集通知は、内容が難しくほとんど目を通さないのが現状ではないでしょうか。財務諸表など難解な数字よりは、工場の様子や新商品の紹介・企業のビジョンなどを多く映像で上映した方が、共感してより理解度が深まるのではないかと思います。
 株主総会は、従来ある「議決の場」だけではなく「年に1回、企業経営者と株主が意見の交換・ビジョンの共有をする場」へと進化しつつあります。

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2010年02月19日

環境対応を考慮したアニュアルレポート

 

 コーポレートコミュニケーションの一翼を担うIR活動では、公開をWEBへシフトする傾向はあるものの、依然多くの冊子を発行する機会があります。その際には、紙のための森林伐採、二酸化炭素排出、排水など少なからず環境へ影響を与えます。企業の環境施策のほんの一部分となりますが、制作現場から見える環境対応印刷の現状をお伝えできたらと思います。

 まず、用紙に関しては、2007年の再生紙偽装問題(高い古紙配合紙の場合、バージンパルプよりも、製造時の環境負荷が高いという実体が、公となった事は功罪といえます)以降、猫も杓子もR100再生紙であった潮流はFSC認証紙へとすっかりシフトしています。(FSC認証紙とは、適切に管理された森林で伐採された原料から作られたと証明された用紙です。)
さらに、企業内での廃紙で再生紙を作り、自社発行物で使用するオリジナル再生紙用紙を用いている企業も見受けられます。
 インクでは「ソイインク(インクが含有する大気汚染の原因となるVOC(揮発性有機化合物)の一部を大豆油に置き換えたもの)」がメジャーです。最近は、VOCを一切(もしくは1%以下)含有しない「Non-VOCインク」が使われてきており、インクからの環境汚染を抑えられるようになっています。

 印刷工程での対応としては「水なし印刷(蝶のマークの物)」が良く使われます。これまで印刷工程で大量に出していた排水を0にした、優れた環境性能をもつ印刷です。また、水を使用しないためインク滲みがなく、仕上りクオリティが向上する事もメリットです。

 また、これからの展開が期待される規格としては「カーボンオフセット印刷」「グリーン電力」が挙げられます。これらは残念ながら、「用紙生産・印刷工程ともに二酸化炭素排出を抑えられる機材を用い、ハイブリッドカーで配送」や「風力、バイオ、地熱、太陽発電で作られた電力で稼働する工場で印刷」するわけではなく、通常と同じ工程、電力で制作されます。
それぞれCO2排出権、グリーン電力権を適切な価格で購入し相殺・グリーン発電所の運用にあてられる仕組みとなっています。
ともに権利購入となるわけですが、切り口に時代性があり、興味深い仕様です。

 また、廃棄を減らすという点で、これまでの印刷部数は一旦リセットし、Web情報なども活用し、本当に必要な分だけ刷るという吟味も、環境負担の大きな軽減となっています。
 
 環境対応印刷には多くの規格が存在し、対応可能な会社の選定作業、用紙選択の制限、印刷費の微増等、多少の負荷が生じる事は否定できませんが、環境負荷軽減への貢献はもちろんの事、サステイナブルな「環境経営」のブランディングにも有効と考えます。

 すでに環境方針を策定している企業も多いですが、環境への使命を強めるため印刷仕様も、今一度チェックいただけたらと思います。
IRツールは企業の実体、メッセージを伝える顔なのですから、環境に対する意思や誠実さを身に纏わせ、活躍させてはいかがでしょうか。

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