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2008年06月 アーカイブ

2008年06月03日

三菱UFJ信託銀行(株)/日本シェアホルダーサービス(株)

 

(お話を伺った方) 
三菱UFJ信託銀行株式会社
証券代行部 株主戦略支援室 グループマネージャー
石垣靖様 (写真右)

日本シェアホルダーサービス株式会社
管理部長
長濱京介様 (写真左)

効果が見えにくいIR

Q1.企業のIR活動の重要性をどう考えますか?

 証券代行機関として企業をサポートする立場からも、IR活動は重要な意味があると考えます。株主・投資家との関係を見直すことで、株主の皆様と長期的な関係を築くことができるのはもちろんのこと、これが時価総額の増大や企業価値の向上につながることで、結果として(現在、関心の高い分野である)買収防衛の観点からも効果をもたらします。

Q2.現在のIRの課題はどんなものがありますか?

 企業にとって、IR活動の効果測定が困難であることも一つの課題です。私達は、株主アンケート等を活用して株主の満足度を測定するよう提案しています。IRを積極的に行うことが、直接株価の向上に繋がるとは限りませんが、投資家や株主の満足度を高めることはできます。株主アンケートを定期的に実施すること等により株主の反応を見ることで、次のIR活動に活かせると考えています。
 日本は、欧米に比べ個人投資家に対するIR活動が積極的です。企業の商品・サービス等のファンである、或いは企業の行っている社会への貢献に共感し株主になる「ファン株主」は、日本独特ですね。機関投資家に対するIRは進化しましたが、今後個人投資家に対する施策をどうすればいいかも、企業の課題だと思います。

Q3.企業は、株主アンケートをどう活かしていますか?

 アンケートの結果は、株主が「配当に満足しているか」「どんな優待がいいか」等、企業が次の政策を行うときの判断材料になりますし、その結果を開示することにより、社外に対しては「株主の声を聞く企業である」とアピールするツールにもなります。

Q4.株主優待は、個人投資家を取り込むきっかけにもなりますね。

 弊社として特に株主優待を奨励しているわけではありませんが、個人投資家の興味を引くきっかけにはなります。株主優待は、B to C企業において自社商品を優待物とする例が典型的ですが、最近では、B to C以外の企業も優待を実施したり、優待物をカタログから選べるようにしたり、また保有する株数や保有期間に応じた優待物を用意する企業も出てきました。

Q5.IR担当者へのアドバイスをお願いします。

 IR活動の効果が見えづらいからこそ、IR担当者は社内外にフィードバックすることが大切だと思います。株主の意向を聞く、社内で効果測定の指標を持つ、IR活動の結果を確認して次の活動に活かすという循環を作っていくことが重要です。


 IR担当者に、IR支援会社から利用しているサービス、今後活用したいサービスを尋ねると「株主判明調査」が挙がる(日本IR協議会「IR活動の実態調査」参考)。株主判明調査を導入する企業は増えているが、その結果を受け企業はどう活かしていけばいいのか。

企業は株主判明調査の結果をどう活かせばいのか

Q1.株主判明調査とはどんなものですか?

 株主名簿に表れない「実質株主」を特定し、株主構成・投資家の概要・投資スタイルなどをリストとして企業に提供するものです。株主判明調査は、大きく分けて国内の機関投資家の判明調査、海外の機関投資家の判明調査があります。

Q2.海外・国内の株主判明調査はそれぞれどんなものですか?

【国内】証券代行機関が提供する株主名簿のうち、名義人が信託銀行になっていることが多くあります。しかし実際は、その信託銀行に運用を委託している投資顧問、年金、あるいは信託銀行が受託者となっている投資信託などの資金が実質的な株主なのです。日本では、名義人に問い合わせをしても守秘義務があり実質株主を知ることは殆ど不可能です。私達は企業に代わって、実質株主を知るための分析・調査を行います。(最短約2週間で調査結果が出る)

【海外】海外では、当社を通して米国のジョージソン社(1)に依頼しています。各種の公表データを使った分析のほかに、機関投資家へのコンタクトを行います。その結果と公表データに独自のノウハウも加え分析・調査を行います。

 海外の機関投資家の場合、通常カストディアン(証券保管銀行)が株主名簿に記載されています。外国人株主の存在は把握できますが、その後ろに実質株主として誰がいるかは分かりません。海外の判明調査は、その「誰か」を調査することです。(最短約4~6週間で調査結果が出る)
 
Q3.株主判明調査の結果を、企業はどう活用していますか?

 各投資家の売買動向の分析やIR活動に活用しています。逆に、自社の株式を保有していない機関投資家に対し、積極的に訪問をすべきところを見つけるといった使い方もあるようです。また、「(脅威になりうる)ヘッジファンド等の投資家がいるかどうか、確認をしたい」という目的で判明調査を依頼する企業も中にはあります。

Q4.株主判明調査は何のために行いますか?

 IRに活かす、脅威になりうる投資家の存在の確認、などのほかに、「実際に株主提案を受けている」ときや、「重要な議案を通すために投資家と対話したい」とき、どんな人が議決権の行使において実質的に権限を持っているのかを調べることは非常に重要です。株主判明調査を継続的に行っている企業は、IRに積極的であるともいえます。

Q5.株主判明調査を行うことのメリットは?

 機関投資家とのコミュニケーションをとりたい、海外・国内の株主と良好な関係を築きたい、と考えるなら、誰が株式を保有しているかを知ることは重要です。誰が株主かを常に把握していれば、いざという時に慌てないで済みますよね。株主と積極的なコミュニケーションをとる企業は、市場からの評価も上がり、リスクを抑えることにも繋がります。

(1)ジョージソン社・・・1935年創業、NYに本社を構える。グローバル株主判明調査、プロキシーソリシターとしては世界最大規模のシェアを誇る。

三菱UFJ信託銀行株式会社
 (証券代行部 株主戦略支援室)SR推進のための総合的なコンサルから、個人投資家対策・機関投資家対策・企業防衛支援など様々なサービスを提供。
お問い合わせ 03-3212-1211(代)

日本シェアホルダーサービス株式会社 
  三菱UFJ信託銀行とコンピューターシェア社の合弁会社。業務内容は株主判明調査、議決権行使勧誘。
株主判明調査に関するお問い合わせ 03-3287-7221(代)

取材・文/萩原恵子

2008年06月05日

株式会社フィナンテック

   

(お話を伺った方)
株式会社フィナンテック
代表取締役社長 甲斐昌樹様

競合他社と差別化するIR

Q1.日本の上場企業は約4000社弱あります。

 日本の市場規模を考えると、数が多い気がします。マーケットが限られている中でプレーヤーが増えると、価格競争になって売上を上げることが難しくなり、過当競争になっていきます。物流や不動産、サービス業など社数が多い業界は、今後統合やM&Aが増えていくでしょう。
 そのような状況の中で他社と差別化を図るには、業界でのポジショニングやマーケットでの位置づけ、成長戦略を明確にし、IR活動を積極的かつ継続的に行う必要があります。

Q2.優れたIR活動を行っている企業は、具体的にどんなことを行っていますか?

 中期経営計画を策定し進捗を継続的に発表している、説明会の開催頻度が高い、webには英語版の情報も掲載している、海外ロードショーも行い、公開すべき情報をしっかり発信しています。そして、国内外・機関投資家・個人投資家それぞれに合わせた資料を用意し、HP・説明会と、どのチャネルを使えばステークホルダーに伝わるかを考えて、情報発信をしていると思います。

Q3.IR部署は、予算や経営者の理解など悩みを抱えています。

決算発表が早まることに伴って監査法人の請求額が上がっていることも、IR予算が削られる原因になっています。上場会社の経営者は、業績を上げて、業績にあった株価を作る事が評価の基準となります。会社の価値を作るのはIRである、という認識を経営者は持つべきですね。IRの重要性を認識している経営者は、まだまだ少ないことが課題です。

フィナンテックのIRコンサルティング・マーケティング

Q4.フィナンテックは、どんなIR支援を行っていますか?

 中期経営計画のサポート、競合会社のリサーチ結果を元に戦略ストーリーにまとめる、投資家にマーケティングを行い、そのフィードバックをもらい企業に提出するなど、様々なサポートを行っています。

Q5.貴社の IRコンサルティング、IRマーケティングとは、具体的にどんなサービスですか?

  IRコンサルティングは、まず中期事業計画作成の提案をします。中期経営計画が重要なのは、新興企業や中堅企業の場合、今後の成長が期待されますので成長の目標数値がないと、投資家は投資には踏み切ることができないからです。そして、企業の理論株価を算出し、マーケットにおける競合・ポジショニングを行い、コーポレートストーリーを作ります。説明会の実施、機関投資家への個別訪問、外国人投資家へ配信のサポートも一貫して行います。
  IRマーケティングは、アナリスト説明会・個人投資家説明会のアレンジや機関投資家個別訪問のアレンジ、ニュースリリースの配信サービスやインターネットIRの支援、海外ロードショーのアレンジも行っています。

Q6.どんなスタッフがコンサルタントを行いますか?

 証券、アナリスト、財務出身など専門知識豊富なメンバーがサポートします。

Q7.他にどんなサービスがありますか?

  個人投資家説明会の開催や、海外機関投資家向けIR情報の配信代行、買収防衛策導入、海外ロードショー、M&Aのバリュエーションも行っています。

○ 株式会社フィナンテック
IR支援会社。IRのコンサルティングからマーケティング支援、インターネットでのIR支援など多岐にわたる。

株式会社フィナンテック
http://www.finantec-net.com/
東京IPO
http://www.tokyoipo.com/
IR STREET
http://www.irstreet.com/jp/

 

取材・文/萩原恵子

2008年06月25日

決算発表の早期化と分散化の重要性

平成20年3月期の決算発表

  2008年5月15日は、東京証券取引所が定めた「本決算の45日以内に決算発表実施」の期限である45日目だった。東京証券取引所がまとめた「平成20年度3月期の決算発表状況」によると、決算期末から決算発表までの平均所要日数は40.2日となり、45日目である5月15日に発表を行った企業は406社(全体の22.5%)にのぼった。企業がIRに積極的になり、投資家からの理解も得られるようになってきているが、四半期開示の義務化や決算発表の早期化など、IRに対する課題は多い。


  東京証券取引所が要請している「45日以内」に決算発表を行った企業は、1,557社(昨年度1,332社)、望ましいとされる「30日以内」に発表を行った会社は355社(昨年度352社)だった。このデータからも、決算発表の早期化に企業が取り組んでいることがわかる。しかし、決算発表が45日目に集中することが問題とされている。

  今回の決算発表を踏まえ、東京証券取引所からは以下の要請が出ている。
・ 45日目の集中日を避けて決算発表を。
・ 理想とされる30日以内に向けてより早く決算発表を。
・ 集中日を避けられない場合、15時のピークタイムを避ける。

 

   一方、新興市場や東証以外の上場企業の発表時期はどうか。やはり集中日は5月15日だった。
  決算短信など、上場企業が発信するニュースリリースの投函代行を手がけるハンズオンクリエイト(東京都中央区)の代表取締役・新納健正氏は、
「決算に関わる物理的な作業が多い。決算の確定から公認会計士の監査まで多岐に渡る作業をこなさなければいけない現状を考慮すると、各企業とも45日目に決算発表が集中するのは避けられない。特に新興市場の企業の場合、IR担当者の人手が足りないこと、管理体制がまだまだ確立されていないこともあり、決算発表が遅れる傾向にある」と話す。
システムの強化と人材の確保も課題だ。

 

  本決算は、企業にとって区切りでもあり、アナリストや投資家の注目を集める機会でもある。あまり決算発表が集中しすぎてしまうと、投資家がすべての銘柄をチェックすることが難しくなり、アナリストが決算説明会に参加できないという弊害がある。情報が埋もれてしまう懸念もあり、決算発表を早期化・分散化することが重要になってくる。

>>株式会社ハンズオンクリエイトのインタビューはこちら

 

取材・文/萩原恵子

株式会社ハンズオンクリエイト

 

(お話を伺った方)
株式会社ハンズオンクリエイト
代表取締役社長
新納健正 様

記者発表資料の印刷と兜倶楽部への投函代行サービス

Q1.記者クラブへの投函代行について教えてください。

 その名の通り、企業の決算発表などのリリース事項を記者クラブへ投函する代行をしています。例えば、企業が決算発表をリリースするとき、兜クラブへの投げ込みを行いますが、その時間・交通費などコストがかさみます。企業は、印刷や投込みといった作業を弊社に委託してもらうことで、負担を軽減できますし、本来の業務で創出されるべきはずの「企業価値」を高めることができます。
  現在、上場企業約300社とお取引がありますが、都内のお客様が多いですね。地方の企業様にもぜひ利用して欲しいと思います。

Q2.5月15日の集中日は、どうでしたか?

 5月15日だけで、40~50社の依頼を受けました。市場を問わず、兜クラブに投込みをしていると思いますが、その日の15時は、兜クラブの入口にズラーッと行列が出来ました。企業担当者でごった返しており、肌で集中日を実感しますね。


 Q3.記者クラブへの投函って何?

  よくニュースで耳にする記者クラブ。これは、首相官邸や省庁、地方自治体や警察などに設置された報道機関の集まっている取材組織で、企業や団体などから情報提供をうける。東証内の記者クラブは「兜倶楽部」と呼ばれ、各報道機関のポストが並んでいる。このポストに、企業の決算資料やリリース事項を印刷した紙を入れ、リリースが完了する。報道機関に取り上げてもらうために必要な作業だ。


株式会社ハンズオンクリエイト
記者クラブへの投函代行を初め、配布資料の印刷代行も行っている。2008年4月からは、電子公告調査サービスを開始した。

○株式会社ハンズオンクリエイトへのお問い合わせはこちら
03-5695-7506

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取材・文/萩原恵子

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