メールマガジン登録
運営会社 株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズ

Powered by Green Power

チャレンジ25

「IR動画・音声配信」企業の決算説明会等を動画・音声にて配信中

続きを見る

田中さん・中村さんとは付き合うな!

Posted by admin on 2010/12/14

 

 ここ数年、「ファン株主」を求め個人向けのIR活動を積極的に行う上場企業が増えています。企業の「ファン」とは短期的な利益を求める投資家ではなく、長期的な視点で事業内容を理解し、真に企業を応援してくれる人たちを指します。ですが、本当に企業の「ファン」と言われる人たちは存在するのでしょうか?

 私は現職に就く前は、約7年間証券会社に勤務し、リテール営業に従事していました。少なくとも私が証券会社で働いていた頃は、企業が追い求める「ファン」といわれる投資家は見られませんでした。当時私が見てきた個人投資家(個性的なお客様が多かったですが…)を大きく2つの典型的な形で分けると下記のような傾向があると思います。実際に担当をさせていただいたお客様2人を例に挙げさせていただきます。

・長期投資タイプの田中さん(仮称)
運用スタイル:インカムゲイン+キャピタルゲイン重視
重要視する指標:ファンダメンタルズ全般
情報入手元:日経新聞、会社四季報、企業IRサイトなど
投資哲学:様々な情報を入手、分析して、優良銘柄を発掘する。

・短期投資タイプの中村さん(仮称)
運用スタイル:キャピタルゲイン重視
重要視する指標:チャート、株価のボラティリティ
情報入手元:各種証券新聞やマネー誌、マネーサイト、テレビ、ラジオ、チャート、他人からの紹介、
投資哲学:フィーリング

 短期的に株式を売買するのではなく長期に持っていれば安定株主にもつながり、またBtoC企業であればロイヤルカスタマーになる可能性も秘めています。おそらく、昨今企業が株主として求めているのは中村さんタイプではなく、田中さんタイプの方でしょう。

 しかし、実は田中さんタイプは株価に反応しやすい指標のEPSやROE、成長率、配当、財務体質などには非常に興味を持っていますが、肝心の事業内容などについてあまり関心はありません。その為CSR活動や企業理念などはほとんど知りませんでした。しかも田中さんは一度売った銘柄は、その企業に対して思い入れが無いために、その後あまり売買をすることがなかったようです。

 つまり、長期で投資をするといえども基本的には「儲かる」ことが大前提で、投資スタイルが短期であっても長期であっても、結局は経済的果実を得ることが第一義にあります。国策として『貯蓄から投資へ』のスローガンが掲げられ10年以上になりますが、思い切って従来型の経済的観点から一旦外れて考えてみてもよいのではないでしょうか?
 
 現在のIRは、数値を中心とした様々な定量面の情報をフェアに開示することを主眼に置かれていますが、今後個人投資家には違った魅力を伝えることも「ファン」を創出する上で必要だと考えます。定量面だけでなく、人材の魅力や会社の魅力、事業に懸ける想い、会社の理念、社長の想い、現場の執念、CSR情報などの定性的な情報です。企業の別の一面を今よりも、もっと多くまた違うアングルから見せる、そしてそれに共感してもらう、という観点です。
 
 採用関連では就職活動中の学生は企業に応募する際、採用のHPだけでなく、CSRのページもよく見るそうです。以前は、給与や福利厚生などを中心に応募企業を判断していましたが、今の就職活動生は待遇面だけではなく、その会社が「社会に対してどのような貢献をしているか」をも選別するポイントとなっていると聞きます。
 
 投資に関しても、例えば「環境問題が劇的に解決するソリューションをもつ会社を応援するために企業へ投資する」、「ソーシャルビジネスを行う企業に対して投資を通じて間接的に社会貢献する」、「日本の発展を真に願い行動する企業家に賛同する証としての投資をする」など新たな投資スタイルがあっても良いのではないかと考えます。
 
 私たちの役割は社会に対して真剣に取り組む企業を発掘すること、またそのような企業と投資家を結びつけることと、そして個人の投資家が社会的意義の高い企業に投資することが「クール」であると感じてもらえるムーブメントを創出することだと思っています。


profile

profile

Permalink | トラックバック (0) | 21:39