メールマガジン登録
運営会社 株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズ

Powered by Green Power

チャレンジ25

「IR動画・音声配信」企業の決算説明会等を動画・音声にて配信中

続きを見る

アニュアル・レポートにおける時代と、そのデザインについて

Posted by admin on 2010/08/10

 

 一般的にデザインや写真・図案などは、その時代の人々への訴求効果を考えて作成されています。したがってアニュアル・レポートを始めとするIRツールのデザインにも作られた時代感が反映されていると思います。

 私がデザインに携さわり始めた1982年当時、まだ日本ではアニュアル・レポートを制作している企業が少なく、一般的な企業においては、作ろうとする意識も薄く、グローバル企業のみが主に海外の株主や投資家向けに英文で作成していた時代なうえに、どこかバタ臭さく米国を意識したデザインが多く、アニュアル・レポートデザインの創世記とでも言える時代だったと思います。

 余談になりますが、そのころ私はニューヨークのCorporate Annual Report社を見学する機会がありました。米国では地域が広いためコンペなどはほとんどなく、一つの企業を長年支援しているため制作スタッフやカメラマンもその企業のパートナーとして認められているとのことでした。したがって写真なども一年を通じ一番良い時期に撮影。その上カメラマンが被写体と懇意な間柄になれるため、表情を捕らえた臨場感のある写真が撮れていること。印刷に関しても、写真の色調や色味についてはデザイナーの納得の行くまで色校正を行い、その費用は印刷会社の負担になるなど、日本では考えられないほどスケジュールにゆとりがあり、また仕上がりに対するこだわりが大きく違う事に驚かされました。

 2000年頃になると、ようやく日本の企業にもディスクロジャー意識がかなり浸透し、日本語版によるアニュアル・レポートの作成が増えてきました。これをきっかけに日本でもアニュアル・レポートが広く普及して行ったのではないかと私は思っています。企画やデザインも米国を意識することよりも独自の特集を設けるなど記載項目にも、その企業の特色が出るようになりました。この様な成長過程を経て現在に至っていると思います。

 では、時代も作り方も違う今後の日本で、IRツールのデザインはどこを目指すべきなのか?

 企画のロジックを表現することは勿論、ただデザインが美しいだけではなく、その企業のカラーや独自のメッセージをどれだけ読み手に伝わるようにデザインするか。経済合理軸よりの傾向がある投資家に、どのようにして数字以外の部分でも心をつかみ、手にとって読んでもらい、伝えたいことを伝わるようにするかが、デザイン表現にかかる役割、可能性ではないかと。
 クリエイターが関わることによって、ひとつの方向性としてではありますが、一冊の物語として読んでもらえる様なアニュアル・レポートを目指すことができるのではないかと私は考えます。

 DTP技術の進歩により様々な表現が可能になった現在、そういった意味で世界の株主にメッセージを発信することを前提に、私達クリエイターは、より社会経済的視野をもって世の中や時代がその企業に対し何を求めているかを感じとる感覚を研ぎすまし、企業の想いをより読み手に伝えられるような努力をし続けなければならないと思います。クライアントと数ヶ月という長い時間をかけて紡ぎ上げていく場で、十分に価値を発揮していくことにこれからのIRデザインの形があると信じます。


profile

profile

Permalink | トラックバック (0) | 14:19