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アニュアルレポートの財務セクションの充実に向けて

Posted by admin on 2010/06/28

 

 今回のコラムではアニュアルレポート(以下、AR)の主要セクションの中から、財務セクションを取り上げたいと思います。ARの主たる読者である投資家にとって、財務情報は投資判断を下すにあたって最もベーシックな情報であり、財務セクションも充実した内容であることが求められています。
 一般的に、ARの財務セクションは、

A.主要財務データ
B.経営分析および財務分析(MD&A)
C.連結財務諸表
D.連結財務諸表に係る注記

の4つのパートから構成されています。CとDは形式がある程度決まっており、企業の裁量余地が少ないことから、ここではAとBに絞り、どのような観点で掲載内容を検討していくことが望ましいかについて、ご説明したいと思います。

A.主要財務データ
 このパートでは、投資家が企業を分析する際に必要となる財務情報の推移(※一般的には6カ年もしくは11カ年)が掲載されています。
 掲載項目は大きく3つに分類できます。また、投資家が投資判断を行うにあたって、最低限必要となる基本情報はそれぞれ下記のとおりです。
(1) BS/PL/CF情報  「売上高」「営業利益」「当期純利益」「総資産」「純資産」など
(2) 一株当たり情報  「一株当たり当期純利益」「一株当たり純資産」「配当金」など
(3) 経営指標  「ROE」「ROA」「自己資本比率」など

 また、基本情報の他に、その企業特有で必要な情報についても考える必要があります。その際には、企業のビジネスモデルによってキーとなるファクターは異なりますので、その点を踏まえて検討することが重要です。
一例をあげると、不動産賃貸事業を主力としている企業のビジネスモデルは、借入れなどの手法で調達した資金をもとに不動産を取得・開発し、賃料収入を得るものです。このケースにおいて、投資家が気にする情報は、投資と回収のバランス、保有物件の稼働状況、財務の健全性などです。
 それゆえ、掲載する情報としても、「投資額」「減価償却費」「フリーCF」、「保有物件の空室率や平均賃料」、「有利子負債」「ネット・デット・エクイティ・レシオ」などが求められます。
 また、主要財務データの選択にあたっては、ネガティブな情報だから掲載しないというスタンスは避けるべきです。たとえネガティブな情報であっても、投資家の分析・判断に必要な情報であれば、継続的に掲載し続けることが、結果的には投資家の信頼獲得に繋がります。

B.経営分析および財務分析(MD&A)
 自社の経営成績や財務状態の分析が記載されており、投資家にとって最も関心の高いパートの1つです。英語では「Management Discussion and Analysis」となることから分かるように、本来は、経営陣が自社の状況をどのように認識・分析しているかを表明するものです。海外企業ではGEやP&Gを筆頭に非常に充実した内容となっていますが、残念なことに、日本企業では、決算短信や有価証券報告書の定性コメント+αの情報に留まっており、今一歩深い分析に踏み込めていないというケースが散見されます。特にBSやCFに関する情報は質・量ともに不足しており、改善が求められます。
 掲載内容が充実しているMD&Aの構造は、「経営方針や目標とする指標」「事業環境」「経営成績(主にPL)」「財政状態(主にBS/CF)」「設備投資の状況」「投資方針や主要な投資先」「資金調達の状況」「利益配分に関する基本方針」「次期の見通し」「リスク要因」などとなっています。これに加えて、中期経営計画など中長期での計画が策定されている場合は、その概要と進捗についても言及することが望ましいです。
 このような構造のもとで、要因分析を中心に展開していくのですが、連結財務諸表からは把握できない定性情報も織り交ぜた上で、どこまで詳細に分析していくかが一つの鍵となります。連結財務諸表を見れば、開示されている科目レベルでの増減額は理解できますので、単にそれが増加・減少したという記述をしても、投資家にとっては有用な情報とはなりえません。売上高という科目をとってみても、事業別・地域別などセグメントレベルでの記載はもちろんのこと、たとえば主要商品別といったレベルでの記述が理想です。また、要因分析にあたっては、その背景や理由・意図に言及することはもちろんのこと、可能な限りそれぞれの影響額を記載していきます。さらに、ROEやROA、自己資本比率などの主要経営指標についても適切な箇所での言及が望まれます。

 最後にMD&Aの見せ方(デザインレイアウト)のポイントをご説明します。このパートはどうしても文字量が多くなることが避けられませんので、読者に読み疲れをさせずに、かつ情報が分かりやすく伝わるデザインレイアウトに仕上げることが重要です。たとえば、構造を整理した上で、「売上高」「売上高・売上総利益」「販売費及び一般管理費・営業利益」といった水準ごとにタイトルとして括ることで検索性を高める、グラフや表を効果的に活用することなどで、見違えるほど分かりやすいMD&Aにすることができます。

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